先月中に、ワクチンの2回目の接種を終えることができて、休日に人と話すことも増えた。ようやく、そういう風に気持ちを向けることができた。人と話して、意外と自分は社会的な人間だったらしい、と気づく。日々の暗さや閉塞感に、自分の気持ちがここまで引っ張られてしまうとは思っていなかった。
 1年前に発表された曲の、「どこかに出かけて 誰かに会うのは 生きていく以上 当たり前のことだ」という歌詞をまた思い出す。良い音楽を知っている人に恵まれていたのは僥倖だった。
 
 仕事帰り、駅のホームを降りると、駅前の繁華街に、21時でも光がある。引っ越してからもう1年以上経ったが、そういう街の姿を見たのは初めてだった。
 それまで街の光のかわりにあったのは工事車両だった。舗装工事を終えて、白く綺麗になった道に光が反射し、ほんの数週間前から比べるとまるで違った街に見える。そして繁華街を抜けた先には、来春オープンの大型商業施設のビルが聳え立っている。
 それは、間違いなく気持ちを明るくしてくれる光景なのだけれど、元に戻るのではなく、新しく上書きされていくのだな、という気付きにもなった。きっと、光を取り戻せなかった場所もたくさんあるはずだ。

 自分自身の中にも、この約2年間によって分断されてしまったものがあって、そういったものの中には、もう戻ってこないものもあるのだろうという予感がある。逆に、やっぱり切り離せそうに無いものもわかってきたような気がする。そろそろ、もう一度選び直しても良い頃合いだろう。